HTML6 でも CSS4 でもない Web 技術のゆくえ - WCAN 2015 Winter に登壇してきました

WCAN 2015 Winter

@kazumich さんにお声がけいただき、WCAN 2015 Winter でおよそ 60 分ほどのセッションを登壇してきました。32:9 のスクリーンがあるという、TED でもやるんかオイという特殊な環境でした。普段はプロジェクター的な投影なので、スクリーンの前に立つのが微妙なんですが、ここはディスプレイが壁面に大量に並んでいて自ら発光するので、部屋を暗くしなくてもテレビのように十分に見えますし前に立っても平気です。

一緒に登壇したのが @yhassy さんと @Hidehisa さんということもあり、近年まれに見る胃痛を伴う緊張を味わいながらお話させていだきました。(リアルにセッション終了後、1時間くらい胃痛がズキズキしてました)

技術的なお話でした

参加されたみなさま、メインセッションや LT に登壇された各位、ならびに運営されたスタッフの方々、ひとまずお疲れさまでございました。貴重な機会をいただき、ありがとうございました。

今回は具体的な実装のお話はおさえめにして、どちらかというと HTML5Experts っぽい Web 標準や、Web の可能性に関するお話を紹介しました。JavaScript のアーキテクチャやライブラリがどうとか、パフォーマンスとエンジニアリングがどうとかは完全封印の回でございます。

総決算的に色々トピックを突っ込みすぎた感と、自分のいつもの駆け足な喋り(滑舌が追いつかない...)を繰り広げてしまった感もあり、難しいと感じた方もいらっしゃるかもしれません。公開用のスライドには言葉足らずな部分などを加筆したので、じっくり見直したり、ググったりしつつ消化していただければ幸いです。

SEO に効く?

今回ご紹介した中で、SEO 的に有利な側面を持つ(or そういうことになりそうな)トピックをいくつか紹介させていただきました。

モバイル対応であったり、HTTPS であったり、AMP 対応であったり、なぜそれを Google 社が評価しようとしているのか、推進しようとしているのか? そのような話には Web の全体的な流れや方向性が必ず背景にあります。

ある特定の対応が「SEO に効く」という話も、方々への説得材料として存分に使っていただければ良いと思いますが、Web を使うすべてのユーザーに対してどのような体験が求められているのかという背景事情にも思いを馳せた上で、Google の検索エンジンと仲良くしていただけると良いなと思う次第です。

IE と和解せよ

これまたセッション中に紹介した IE のサポートポリシーに関連して、Microsoft 社から周知が行われています。予めクライアントを説得したり、訪問者のUA比率を確認しておいたり、年内のうちに何らかの準備をしておきたいところですね。

環境光の利用例

セッション中にちょろっと話した、Ambient Light Events の作例は @girlie_mac さんが HTML5Experts で紹介されていた HTML5で実現できる!環境光に合わせたレスポンシブなUI でした。

所感

他のお二方のお話も、ヤスヒサさんの話は自分が今まさに直面していて改善できないプロセスの問題に直結して、心やら胸やらが痛むお話でしたし、ヤスダさんの話も弊社の若い衆に言って聞かせてあげたい内容でした。

いずれも、どこかで直面する問題を抉る素晴らしいセッションでした、げふ。

参考リンク

WCAN 2015 Winter 参考リンク集 がフルバージョンなんですが、以下には日本語リソースを中心にいくつか抜粋したリンクを掲載しました。心に残ったキーワードがあったならば、参照してみてください。

若干のポエム(苦手な方は読み飛ばしましょう!)

今回のセッションのスライドを作りながら悶々と考えておりました。Web 制作に関わるひとたちは、自分のようにエンジニア/プログラマに類するような職能ばかりではありませんが、Web の技術ネタを肯定的に受け入れてもらいたい気持ちはあります。

デザインナーやディレクター、セールス etc... Web の「技術」と如何ように向き合うかというのは、それぞれの立場によって見解が異なります。

ポジショントークと言ってしまえばそこまでですが以下は、作る側の人に向けたポエムです。

Web の技術トレンド

いわゆる「トレンド」と呼ばれるものから距離を取るべき瞬間は確かにあります。JavaScript ライブラリの大半や、ビルドツールのレパートリ、CSS の設計手法 etc... すべて少しでも「より良い」に近づくための手段ではありますが、最終的なアウトプットを劇的に変えるインパクトをもつことは、ほとんどの場合でありません。

軽視してもよいもの、ならないもの

個人的に、エンジニア/プログラマであってさえも「トレンド」は時と場合、労力、立場、心情などの都合で軽視してもよいと思っています。

反面、軽視してはならないのはパフォーマンスやアクセシビリティ、今回紹介した中ではセキュリティのように基本的な品質に関わる部分です。もちろん、そこに労力を投下するならば程度の問題はありますし、仕事として費用対効果の問題から逃れることはできません。

必要なのは、最小の労力で最低限の品質を担保するための知識と、それ以上を目指すときの費用対効果の見積もりをするための知識です。

最低限の品質を守るために

本編で他のスピーカーの方から「価値の提供」についてお話がありましたが、前項であげたパフォーマンスやアクセシビリティ、セキュリティに関する最低限の品質というのは制作者にとって価値そのものを担います。

制作行為が最終的に経済活動に寄与することは当然必要なのですが、そこはそれ。マネタイズと制作者として守るべき品質は両立すべきものであり、片方が他方を損なうものではありません。

経済活動の観点からして、パフォーマンスやアクセシビリティの品質低下は「機会損失」に直結します。また、セキュリティ的な欠陥は純粋な「リスク」です。

制作技術としてのSEO云々は、マシンリーダビリティということでアクセシビリティに含めます

区別なき軽視のリスク

このような区別がついている上で、技術にかける力加減をコントロールできる場合は問題ありません。憂慮すべきは、その区別がつくようになる前であるのに必要な知識を得ようとしない場合のリスクです。

あなたが作る側の人間であるならば、ぜひ力加減の必要十分を確信できるようになるまで、技術や物事の道理を学ぶことを諦めないでください。

知識の単純な放棄は、顧客のデータベースを壊しますし、ユーザーの個人情報を漏洩させますし、満たすべき要件を満たせないゴミを生産します。あなたが十分な技術力を持っていて、それそのものを価値にできるのであれば、マネタイズやビジネスの機転は他の人に任せてもよいのです。その分、あなたが作る人間として守るべきすべてを担えることを前提とします。

と、思うのでした。

月並みですが、人にはバランスが必要です。すべてをバランス良く身に付けるのでは無く、自分が今生きている環境で生きるために、場合によっては偏ろうとすることがバランスです。

向き不向きはあるので、それはそれでみんな頑張ってバランスとりましょうね!

蛇足なんですが、新しい価値を提供するためのモノだとか、職人の意地を守るために犠牲にしてはならないモノだとか、エンジニアとして創造するために必要な没頭だとか、そういうのもあるんですがま〜。リソースが限られた環境下で何を優先して、何を諦めるのか、っていうのは、また別の仕事スキルです。はい。


Author

ahomuAyumu Sato

overflow, Inc.VPoE

東京資本で生きる名古屋の鳥類

Web 技術、組織開発、趣味など雑多なブログ。技術の話題は zenn にも分散して投稿しています。

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