強制リモートワークによる会社組織と個人の適応
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社会情勢による逃げ場のない強制リモートワーク
COVID-19 の影響によって今年に入ってから、社会全体...というと明らかに言いすぎですが、感度の高い業種や大企業を中心にリモートワークに適応する動きが強まっています。ポエムですよ。
適度な息抜きでバランスをとることを前提としている平時のリモートワークと異なり、社会情勢によって閉塞した逃げ場のない強制リモートワークです。過去に自分のブログで次のような話を書きました。
オフィスに依存しないメリットは最後にやってくる リモートワークとオフィスワークを行き来することで、組織やチームにとっての課題も明らかになってきます。はじめは皆が試行錯誤することになるとは思いますが、それによってリモートワークが働き方の選択肢として機能するようになれば、それは組織が新しい環境に順応できたと言えます。
洪水、大雪、災害、誰もがリモートワーカーになる可能性があります。オフィスに依存しないようにしておくメリットもあります。勤務地に依存しない採用が可能になるメリットもあります。
このときは、平時の働き方の選択肢にリモートワークを加えることで働き方の自由度が得られ、組織的にも適応できればイザというときの備えになる、という意図で書いていました。
わたしが務める渋谷の会社でも全社リモートワークが始まっています。もともと個人単位のリモートワークは私含めゲリラ的に行われてきていましたが、組織やチームとしてリモートワークに適応できているとは言い難い状況下での強制イベントに突入しています。
今はお祭り気分で勢いよくいってる事例も少なくありませんが、そのうち疲弊した事例があがってくる気がします。
以下すべて、全員がリモートワークになる状況を平時の前提とはしてこなかった環境を想定した行動方針の話です。
個人リモート≠チームリモート
今回十分な準備がないままにリモートワークで事業継続を強いられている会社は決して少なくないでしょう。
自由出勤みたいな感じで半端に個人単位のリモートを許容して慣れてたつもりの現場ほど、個人中心のリモートからチーム中心のリモートに意識変えないとやられそう。
— ( ・∋・) (@ahomu) March 27, 2020
個人単位でリモートワークの諸々の不便や、オフィス側とのコラボレーションを工夫して自身のパフォーマンスを成立させることとは話が全く異なります。
平時ならチームの中のひとりが四苦八苦していたところで大きな影響は起きづらいですが、それが一斉に発生してチームや事業を存続可能なように立て直すのは遥かに難易度が高い話です。
組織観点: 事業継続のためのチームワークの維持
もともと生活や事業に選択肢を加えるリモートワークという形態が、望むと望まざると強制されてしまっています。平時ならできる「向き不向きにあわせて使い分ける」という選択肢が大幅に制限されています。
仮に1週間ならまだしも中長期化することで、この毒が徐々に組織やチームを蝕みます。経験則ですが、おそらく2週間〜1ヶ月で歪みが顕在化します。
個人単位のパフォーマンス低下はもちろん危惧されるべきですし、チームとしての精神衛生、今風にいえば心理的安全性も損なわれる可能性が高い状況です。このような状況下で事業継続をするためにはリアルタイムな業務の見直しと積極的な行動が必要です。
コミュニケーションの機会づくり → 孤独死対策
ウサギは寂しいと死ぬと申しますが、人間も寂しいとパフォーマンスが落ちますし、当たりどころが悪いと死にます。集団においては徐々にギスギスします。
平時なら「ウザがるひとがいるかも...」と遠慮するような賑やかしですら、今ならウサギを救うために正当化しえます。(ロンリーウルフ用の脱出ハッチは用意してあげましょう)
- 朝会、昼会、夕会などルーティーンで顔を合わせる機会づくり
- リモートお茶会、リモート飲み会など zoom で雑談できるイベントづくり
- discord や tandem を利用していつでも声をかけられる環境づくり
- 1on1や定例など従来のサイクルを崩さず、当たり前のように維持する
- 今だからこそ話題に事欠かないでしょうし、個人の状況把握に続けるべき
敢えて「孤独」という扱いにしますが、孤独に適性がないひとも長期のリモートワークが強いられている状態の今は孤独を救う試みが必要です。リーダー、マネージャーはもちろん、ひとりひとりがコミュニケーションの機会を無遠慮に作ってしまうほうが今に限っては正解です。
(可能であれば)従業員への実のある支援
普段リモートワークをしていなかった場合、個人環境の整備がパフォーマンス維持に不可欠です。個人としては現在のように先の見通しがつかない状況下で私費を投げ打って設備投資することは決断しづらいでしょう。ましてやそれまで自宅環境に投資していなかったひとなら尚のことです。
- 指定種別の物品を経費精算を可能にする
- 光熱費などの補助名目で一律で手当てをつける
- etc...
個人が環境整備するための背中を押す施策を可能ならしてあげてほしいです。これはどちらかというとお願いです。長期化すると名目のはずの光熱費、通信費すらバカにならないので、地味に個人の財布と精神を締め付ける恐れがあります。
オフィスワークでも普段からやりましょう????
ポジショントークとしては普段からやれ????と言いたいところですが、今のような状況を潜在一遇の機会として啓発できるのであれば、今こそ啓発すべきです。情報の流通量を増やす枠組みをつくって組織における個々人の即応性を高めましょう。
- コミュニケーションのオープン化
- 揮発する情報のテキスト化
- コラボレーションの仕組み化
- ツールを上手に使いましょう(slack, zoom, miro etc...)
see also... 開発や業務におけるチャットを使った情報共有の民度、潜伏あるいは揮発してしまう情報のリスクについて ::ハブろぐ
個人観点: 自分のパフォーマンスと家庭とのバランス整備
テキストが長くなってきたので桜の木を置いておきます。
個人単位で備えられることは「リモートワーク攻略ノウハウ★」的な世間の既存情報で網羅されています。その上で繰り返しとなりますが平時ならできる「向き不向きにあわせて使い分ける」という選択肢が大幅に制限されていることを前提に動かなければならないのがネックです。
基本的な身辺整備
オフィスでパフォーマンスを出すことを前提にしていた人からすると、強制リモートワークで物理的にも心理的にも準備のない状態で戦わされるストレスは相当です。
そのためにも心身ともに自宅で仕事をするための習慣や環境を整備することは避けられません。具体的な話は完全にノウハウの再生産になるので端折りますが、とりあえず良い椅子と散歩と生活リズム再構築をがんばりましょう。
see also... 上手な「在宅勤務」のコツ | Google Cloud Blog
同居人や社会との距離感の獲得、ストレス対応
今の環境は、日中において「職場> 家庭」を前提としてとれていたバランスが強制的に「職場 ≒ 家庭」になる可能性があります。
夫婦共働きで両者ともリモートワークにシフトしていたり、どちらかが専業でも出社がなくなって同じ空間で長時間過ごすことになったり、外出自粛が否応なしに逃げ場のない家庭内不和の温床を生んでいるのが現在の状況です。
家庭をストレスとみなすことに潜在的な忌避感を覚えるひともいるかもしれませんが、明確な苦痛に気づかなくても、普段と勝手が違うだけでもストレスは生じます。自分以外の他者と閉塞空間に長時間とじこめられるのは存外にストレスフルな環境になり得ます。
一般的な解はありませんが、今の生活に必要な何らかの距離感を掴むことが必要です。それが家庭内コミュニケーションのルールなのか、物理的距離(部屋わけ)なのか、はたまた家事分担の仕切り直しなのか、様々です。どうか、ストレスを自覚して率直に話し合ってください。そして休んでください。
子供がいる家庭のカオスは想像が追いつかないので差し控えますが、並々ならぬ苦労が起こり得るのでしょう。
単身者の場合も、同僚の「6畳ワンルームで1日中パソコンの前はキます」というコメントのとおり精神衛生が重要な課題でしょう。これは前述の孤独死対策に通じますが、ぜひカクヤスで酒を取り寄せて毎日リモート飲み会してください。アルコール消毒は精神衛生にも有効です。
適応機会としてポジティブに取り組めるといいですね
いいですね。うん。
私がリモート始めた頃と比べると社内のビデオチャットのインフラ(いま security/privacy で大盛り上がりのzoom!)が整備されて環境的には非常に良いものです。この機会にみなさんが今の働き方に慣れてくれると私は得することばかり。(※名古屋在住で渋谷の会社に努めています)
オフィスワークでも発生しうる課題をさもリモートワーク特有の課題であるかのようにノウハウを再生産する自称リモートワークベテラン各位
— ( ・∋・) (@ahomu) March 31, 2020
このとおり思いっきり煽っているわりには、自分用の整理というテイで私もブログを書いてしまいました。すまん。というかやっぱ弊社の中の様子を眺めていて心配が募ってきたのをそのまま文字に起こしました。がんばろ。