事業会社のWeb/IT開発系マネージャーとしてのプレイスタイルまたは取扱説明書
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目次
これまでに培われたスタイルの棚卸し
先日の記事 では直近2年間に携わってきたアクションを延々と書き連ねましたが、今回は直近2年とそれ以前の経験によって培われた自分自身のプレイスタイルを書き綴ります。
経験してきた技術組織のマネジメント
おおよそ次のような環境でマネジメントや、それに類する業務に携わってきました。
- メディア事業全体を横断するWeb フロントエンド人材、技術に関する取り組み
- 50人規模のエンジニアリングチームのマネージャ
- 400人規模のエンジニア組織の技術人事 w/人事、各エンジニアリングマネージャ
- 40〜50人規模のスタートアップのボードメンバー VPoE
さかのぼると入社からしばらくして30人弱の評価者を突如ぶん投げられた記憶もありますが、マネジメントというよりお役目だったので割愛・・・。
マネージャーとしてのスタイル
根底にあるのは凝り性でありつつ、飽き性であるということ。
進むということは変化するということ
特定の目的に向けて進むためには、大なり小なり変化が必要です。誰かが変えたい、変えるべきと思ったら何でも変えて良いというスタンスであり、変化を恐れずっと同じ場所に留まっていてはその先にある本当に重要な変化に触れることすら難しくなります。
ダイナミック・ケイパビリティは私の考え方と相性が良く、周りの環境変化に適応し続けるため自らをも変革し続けられるケイパビリティを備えた組織開発、チームづくりがマネージャーとしての重要なテーマです。
自由度が高くて優しい専制主義
変化が生み出される土壌を作るというスタンスを前提として、その土壌から生み出される変化を育て上げ、結実させるためにフォロワーシップやサーバントリーダーシップを手段的に好みます。放牧と揶揄されることすらありますが、各所から自発的に生み出される変化による効果の最大化を念頭に置きます。
一方、ボトムアップ的なアプローチだけでは経営や組織の大局観において大きな的(まと)を定めたり、狙ったりすることは難しい傾向にあります。ボトムアップに頼り切らないためのディレクションとして、中長期における技術組織としての統率や戦略、方針の言語化は欠かさず行うようにしており、優しい専制主義を自称することがあります。
マネージャーとして実現すべき抽象
優しい専制主義を構成する自身のコミットメント。
透明性を高く保ち変化を実感できるようにすること
自律的な変化を演出するためには、変化の必要性や内容を検討するために十分な情報が組織内に流通していることが不可欠です。曰く、情報の透明性を高く保つことが該当します。
情報の透明性は、階層の上下間における情報の非対称性に対する是正だけを指すものではありません。横の組織間や横のチーム間における透明性も必要です。マネジメント一般において時には「余計な情報を入れずに専念させたい」という要請もありえますが、私自身はあまり選ばない選択肢であり、そのようにすべき時はその旨をフェアに宣言します。
チャレンジや成長の機会をつくり続けること
エンゲージメント観点において組織の硬直化は、個人の成長実感の鈍化に直結します。組織における有形無形の変化によって結果的にもたらされる副次効果とも言えますが、組織の中に常に新しいチャレンジや成長の機会があるように努めます。
変化を担うのは常に人です。その人にとって「ある変化」がどのようなものであるのかを考え、「ある変化」においてどのような人を結び付けることができるのかを重要視します。そのような変化の中における個人のチャレンジを発見することが成長機会の創出に結びつきます。
注力すべきを指し示すこと
大局観を担うマネージャーの責任とも言えますが、組織として実現すべき的(まと)を示し、期待される変化の方向性を指し示すことはハンズオンで取り組むべき重要な関心事です。注力すべきに十全なリソースを投下できているかどうかは物事の成否を左右します。
方向性を示し変化を統率するということは、マネージャーとしての責任分界を自認し影響力を行使するということです。影響力を発揮するためにはメンバーの納得とフォロワーシップを引き出す必要があり、その用途においても前述の透明性と成長機会が効果的に作用すると期待しています。
マネージャーとしてよく使う手法
個人的なお気持ちを支えるやや人事っぽいメソドロジー。
土着のカルチャーを最大化するための仕組み
ここまで述べたような自分の中の基本戦型はありますが、環境や目標に応じて最適な仕組みや制度の具体は異なります。最適な仕組みや制度を導き出すための土着の優れたカルチャーを発見することが重要です。
カルチャーは創る物であると同時に発見するものでもあります。0 -> 1 を除けば、それまで組織成果の再現性を担ってきていた文化が必ず存在します。優れたカルチャーを発見してすくい取り、それを最大化できる仕組みや制度を勘案しようとします。
8:2の法則、縁の下の力持ちと推進力
パレートの法則は組織にも一見して適用されます。どれだけ優秀な人材が揃っていても活躍していると特筆できる人材は2割程度に収まる傾向にあります。
よく言われる2割の「活躍」の多くは組織における推進力です。私は残りの8割が活躍していないのではなく縁の下の力持ちとして「活躍」していると捉えています。8割がベースラインを支えているからこそ2割の推進力が物事を実現できます。個々人レベルでみると、長い期間を推進力として駆け続けられる人材は稀です。前衛と後衛は常に入れ替わる可能性があることを念頭に、個々の成長とプロフェッショナリズムを求めます。
ピープルマネジメントはストーリーが大事
経営や組織における必要性、合理性で先に結論がでているとしても、そこにどれだけのストーリーを見いだせるかによってマネジメントの質と価値が変わります。
個々人にとっての必然性を整え、「本人の成長」「周りへの好影響」といった期待を丁寧に見つけ出して言語化し、周知していくことでアクションの意味や効果が大きく変わります。特に人材の適材適所施策において顕著ですが、ストーリー構築の成否は当事者はもちろん意思決定者にとってもひとつの基準たり得ます。
インクルーシブとボトムアップの重用
自律的な変化を重んじるという個人的なスタイルもあって、インクルーシブやボトムアップ的なアポローチを重用します。インクルーシブに意思決定や運営にメンバーを巻き込むことでより良い結果を求めたり、ボトムアップにあがってきたアイディアへのエンパワーを優先したりします。
これらによってもたらされるのは組織の「自分ごと化」であり「組織のお客様」を減らすための方策でもあります。これまで述べた内容のそれぞれと相互に作用することで、自律性や主体性の発露、エンゲージメントと業務パフォーマンスの向上に結びつきます。
これまでとこれから
本稿の内容からもお察しのとおり、これまでマネージャーとしての私にとっての主戦場は技術組織開発とピープルマネジメントです。過去の経験的に HRBP 色が強めなことに加え、開発者として横軸の技術マネジメントに携わってきた為そういう施策も立案や支援も得意とするところです。
一方あまり経験として強くないのはプロダクトマネジメントやプロジェクトマネジメントと言った地上戦の領域です。世間的なエンジニアリングマネージャーにしばしば求められる要素でもあります。ただ自分で言うのも非常に業腹ですが、ハンズオンでは「突撃」「停まれ」しか命令コマンドをもたない思考回路を自覚するところであり、これらはもっと理性的な各位に委ねて自身は統率や戦略に寄った役をしてきたように思います。
このような役回りが求められるフェーズは限られますし、場合によっては贅沢を言ってられないことも多々あります。今もたまの特攻役ならやぶさかでなく従事することもありますが、マネジメント系で証明済みの強みは組織開発寄りかなと。
これからの話としては、プレイヤーとしての特攻スタンスからは逃れられる気がしないので引き続き理性的な各位に託しつつ、私自身は経営と一緒に組織や技術を育てていくような仕事を引き続きやっていけるとバリューを発揮できるのではないかと思うところでございます。