開発や業務におけるチャットを使った情報共有の民度、潜伏あるいは揮発してしまう情報のリスクについて
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テキストチャット中心の開発コミュニケーションと課題感
ご飯ブログを書いてばかりで、老害活動できていないからたまには真っ当なブログ。
最近、テキストチャットを使ったコミュニケーションが円滑になるためには?という課題についてよく考えるのでチャットユーザの民度を上げるための覚え書きをまとめます。
Slackなどを使ったチャットコミニュケーションの民度、運用の成熟に思いを馳せてる。
— あほむ (@ahomu) June 28, 2016
オフィスワーカーにとってのチャット
オフィスワーカーであっても、メールと同じで記録が残りメールよりも即時性が高い、チャットによるコミュニケーションは少なくありません。物理的に移動する手間を省き、送信側の任意のタイミングでメッセージを送れることなどが魅力です。
口頭コミュニケーションは即時性が高い代わりに揮発性も高く、その場に居合わせないと得られない情報です。口頭はオフィスワーカーにとってもプライマリな手段ではなく、最適化や使い分けが求められます。会議の頻度や、人数、時間に気を配るのも口頭のコミュニケーションを最適化するために必要なことです。
口頭のコミュニケーションとの使い分けは前提にあるので、何を口頭にすべきで何をチャットにすべきかは今回触れません
受信者のレスポンスに即時性が求められるか、遅延を許容できるかはトピックの内容によるので一旦おいておきます。
リモートワーカーにとってのチャット
現職においてリモートワークは特に推進されてはいませんが、出産・育児などのライフイベントを考慮して一部でリモートワークが認められています。自分自身も数少ないリモートワーカーとして働いていますが、普段のコミュニケーションは基本的にチャットです。
チャット中心の開発コミュニケーションを行うにあたって、リモートワークの場合は全員が同じオフィスにいることで何となく情報共有できている、あるいは共有された/した気なっている部分の誤魔化しが効きません。
同じオフィスにいたとしても全員が全員同じ方向に注意を向けているわけでも、時間を共有しているわけでもありません。同じオフィスにいるということは、伝わる機会が多いだけであって、伝わっていることの保証にはなっていません。その辺り踏まえつつ、リモートワークのほうが問題を顕在化させやすいだけであり、リモートもオフィスも問わない問題であることがほとんどであると考えています。
潜伏する情報と揮発する情報の問題、その対策
あらためて現在の自分が考えるチャット利用時の問題を整理すると、次のような問題が挙げられます。なるべくリモート、オフィスを問わない普遍的な問題として書き起こしています。
- ダイレクトメッセージによる無用に秘匿されたやり取りで物事が進む(情報の属人化)
- 秘匿された情報に潜む問題に誰も気づけない(リスクの潜伏)
- 秘匿された問題に対する解決を誰も提示できない(解決機会の損失)
- 揮発する口頭コミュニケーションの結果が集積されない(振り返られない)
- 共有可能にできるはずの情報にロスがあるのは単純に損失
集約すると「無闇にダイレクトメッセージを使いたがる」ことと「口頭コミュニケーションが揮発して消える」ことが問題の中心です。
対策1: 業務に関わる相談は衆目のあるグループでやり取りする
本当にプライベートすぎたり、他の人に聞かせられない内容であれば存分に DM を使えば良いでしょう。センシティブな内容を扱うが故に公開範囲を限定したいなら、プライベートなグループを作れば済む話です。
- コミュニケーションを衆目に晒すことの抵抗感
- ログを大量に流してしまうことへの抵抗感
DMの利用を促進してしまう理由としては、おそらく上記の2点があるのかなと推測しています。これらの抵抗感が解消されるような仕込みも、この対策を成立させるために必要そうです。
前者の抵抗感について例を出すと、マサカリを投げられることへの忌避もしくは幼稚な質問をしてしまっているかもしれない羞恥みたいな動機で半プライベートなグループが繁殖するというケースがあります。そのグループ内で偏向した意思決定をしてしまっている危険性もあるので、開発コミュニケーションを円滑にするためには可能な限りそのような壁は取っ払うべきです。一方で、心理的なストレスを回避した結果でもあるので、それまでのコミュニケーションが無駄に攻撃的でなかったか、テキストの言葉尻に気遣いは足りていたか、など周囲の内省を必要とすることもあるでしょう。
後者の抵抗感については「うるせーばか検索とかFavとかPinとかあるだろ道具つかえよ。これしきの情報量も扱えないで何が現代人だ!!!」でお願いします。
対策2: 揮発する情報を、議事録やメモにしてまめに共有する
共有先がチャットである必要はなく、どこかに残っていれば良いくらいの認識です。本当に小さい相談とか、チャットの最中に「ごめん、直接話していい?」の結果とかは、チャットにフィードバックされるべきでしょう。コードレビューに関連する話であれば、GitHub にコメントとして残すのが自然です。
ちゃんとした MTG は多くの場合、適切な場所に議事録が残されることを前提としているので、そもそも問題になりません。日々のカジュアルな口頭コミュニケーションで揮発している情報を、なるべくどこかに記録して共有する姿勢が重要です。落とし込まれない場合は揮発してしまう分、ダイレクトメッセージよりも情報のロスが大きくなっていると考えられます。
主張の正当性を支える勇気
そもそもこういう方向性でたとえば DM 禁止だボケェと言い出すのが正しい行いなのかは、いよいよ議論の対象とすべきですが、とりあえず Twitter に雑なことを言った限りではいくつかの fav や mention をいただけました。
@ahomu これができない組織ではリモートワークは成立しないんじゃないかと思います。全員が実行できるようになるのは簡単なことじゃないですが…
— Yoshihide Jimbo (@jmblog) June 28, 2016
@ahomu リモートワークという制度を取り入れているのであれば、リモートワーカーだろうがオフィスワーカーだろうが関係なく、全員がそういう姿勢で臨まないと、すぐに情報の偏在化が起こってしまって、組織として破綻しちゃうと思います。
— Yoshihide Jimbo (@jmblog) June 28, 2016
@ahomu 意思決定の迅速化、作戦目標の共有、各個人の認知能力の増大etcにおいて情報共有は最重要です。むしろ出来なきゃ負けです。情報の寡多は正確な現状把握に影響します。組織戦の基本中の基本。
— さね (@saneyuki_s) June 29, 2016
以上の引用をもって、勇気とさせていただきます。
結論
ダイレクトメッセージは用法用量を守って!!
ということでした。いやもうほんとそれが大半。業務相談を DM されるたびに、衆目のあるチャンネルに誘導する業務に励むのであります。(まあいいや...ってスルーしてることもあるけど...)
あと、本件について Twitter で mention いただいた中で「非同期コミュニケーション」という単語と概念を知るに至ったので、気が向いたらそのへんもまとめてみようと思います。
現場からは以上です。